今日も1日お疲れさまです。
先日、ロピアについての記事を書いてそこまで時間は経ってませんが、今回はブックオフで不適切事案が発生しました。
関連記事:BOOKOFF複数店で架空買い取りか – Yahoo!ニュース
小売業界に勤務する私の視点からいくつか考察をしていきます。
※あくまで個人の考察です。
今回のブックオフの件は先日のロピアの不適正表示の件と比較すると、より悪質なものだと思ってます。理由はいくつかありますが、架空買い取りからの在庫の不適切な計上・現金の不正取得という粉飾の流れがあまりに悪質で、消費者だけでなく企業を支援する投資家たちも騙すことになるからです。
ここでポイントとなるのは在庫の棚卸と時代の背景です。
在庫の棚卸
棚卸というと「在庫を数える」というように思っている方もいるかと思います。それで間違いありません。ではなぜ数えるのかというと、その期間の利益を確定させるためです。期間というのはだいたい半年から1年くらいです。数式は複雑ですが、その期間中の売上金額・仕入金額・在庫金額で利益が決まるのです。
スーパーやドラッグストアでたまに変な日に休業になっている日や営業時間が普段より短い日があります。入口に行くと貼紙で「決算棚卸業務につき休業」という旨の内容が貼られていることを見たことある方もいるのでは??
あれは休業中に店舗の従業員が売場の在庫を1つ1つ数えているんです。その在庫金額の合計と、期間中の売上で店の利益が確定します。これをお客さんのいる開店中にやると数えた商品の数と売上金額でズレてしまうので休業にしたり、営業時間を短縮したりします。
在庫は「今後売上になるであろう金額」で計上されます。在庫になっているものだけ金額を下げたりすることはできません。500mlのペットボトルのお茶が本体価格98円の売価で30本売場にあれば、98円×30(本)=2940円の在庫になる計算です。
この売場にある商品を片っ端から数えていくのが棚卸です。商品の数が膨大なのでかなり大変です。利益を確定させるとても大事なことなので、たまに企業の外部から監査の名目で厳しくチェックされることもよくあります。私が店舗で棚卸の時に経験した外部監査の方はかなり細かくチェックする人で本当に大変でした。
今回のブックオフの問題というのはこの棚卸の部分だと思ってます。
例:古本買取(1冊20円)→150円で売価設定→売場へ(売れてない場合は150円分の在庫)
これが本来のやり取りだと思います。買取価格と販売価格でボッタクリだなんだと記事でのコメントはありますが、そこは売れ行き次第での売価設定なのだと思います。
上記をふまえて、架空買い取りを推測すると、
古本買取(1冊20円)(実際はデータのみ計上)→150円の架空在庫(現物はなくデータのみ)
こうなると思います。ありもしない在庫が店舗のデータで計上されてるわけです。これが決算になるとどうなるか?売上にも何もならないものが売上金額として計上されます。
ここに監査が入れば、実際の在庫の数とデータ上の数で大きく差が出ていることを指摘されるのは明らかです。万引きの被害や廃棄の登録漏れなどで小さな誤差はあるかもしれませんが、この架空在庫は大問題です。上記では1冊分の例でしたが、おそらく問題の数値はもっと大きいはずです。監査入らなかったんですかね??
偽りの売上金額で利益が出ているように工作していたということになります。
もう一つの問題の現金の不正取得に関しては、これはシンプルな図式で「買取できないから無料で引き取って処分する」はずの古本を、従業員内部で買い取る値段を設定し、現金を取得していたのが想像できます。
時代の背景
こうなった経緯は以下の3点が考えられます。
- そもそも本自体を新品で買う人が少なくなり、スマホの電子書籍で購入するようになったこと
- 本を買ったとしても不要な本を売れるのはブックオフだけではなくなったこと(アプリの普及)
- それでもブックオフの店舗に足を運んでくれる人がいてもコロナ禍で不要な外出で1カ所の長時間滞在が難しくなったこと
コロナ禍以前から既に逆風だったと思います。
私は欲しい本は現物を購入して手元に置いておく人間ですが、本は場所も取るし運ぶと重いといった理由で電子書籍にする人も多数います。
古本を売るとしてもわざわざ店舗に行くよりもアプリで可能な時代になりました。
そんな中でも会社は実績を出さないといけません。その責任感が間違った方向に向いてしまい、今回のようなことになったのではないかと思います。
ロピアの件でも、今回のブックオフの件でも、ダメなものはダメです。
そうやってその場を凌いだところで後になって反動がくるのはわかりきっていることです。
「利益を出さないと上司に怒られる」という短絡的な思考でこうなって後に退けなくなったのでは??
最後に
実は少し前に、勤務先のある店舗で月末の棚卸の金額を誤魔化すということが起きました。
この経緯を受けて社長から
「商売はいいことばかりではない。むしろ売上や利益が悪いなど嫌なことのほうが多い。それでも在庫を誤魔化して利益が出ているようにするなど、人を騙してまで商売は行うものではない。真っ当な商売をしてほしい。」
こうした通達が店舗とは離れた工場勤務の私の勤務先にまできました。言っていることは至極真っ当ですが、これを行うことのなんと難しいことか・・・。
他の企業の不正を見ていると本当にそう感じます。
最後までありがとうございます。
それでは皆さん、今日も1日お疲れさまです。
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